9月におじいちゃんが亡くなったね。88歳だった。
あなたたちにとっては、優しいおじいちゃんだっただろうけど、お父さんにとっては厳しくて怖くもあり、また思いやりのある優しい父親だったよ。
お父さんのお兄さん、あなたたちから見たらおじさん夫婦が一生懸命自宅で介護してくれたおかげで、おじいちゃんは今ではめずらしく自宅で最期を迎えることができた。
「会うは別れの始め」というけれど、本当にその通りだね。
これは、「人と人とが出会うのは、いつか別れる時が来るということでもあり、会うことは別れることの始まりであるとも言える」(学研 故事ことわざ辞典)という意味だ。
親子、兄弟、親戚、友人、知人、みんな例外なくいつかはお別れしなくちゃいけない。
おじいちゃんも80歳を過ぎてだんだん衰えて、いつかはお別れしなくちゃいけないと覚悟していたけれど、とうとうその時が来たね。
でも、多少は別れの淋しさはあるけど、悲しくはないな。
なぜ、悲しくないかって?
お父さんって冷たい?
突然の事故や病気で亡くなった場合はそうはいかなかっただろうけど、年齢のこともあり覚悟していたからね。
それと、悲しまなくてすんだのは、昔、お父さんが経験したことが影響していると思うので、それについて少しお話しするね。
まず、お父さんが初めて人が亡くなってお別れしたのを経験したのは大じいさまが亡くなった時だ。当時、お父さんは小学校5年生だった。
朝、7時半ころに亡くなったんだけど、お父さんはもう学校に行っていて家にはいなかった。学校に連絡があって、慌てて家に帰るとおばあちゃん(お父さんの母親)が、すごく冷静に亡くなった大じいさまの体を拭いたり整えたりしていた。
お父さんは、そばにあった椅子に伏して大泣きしていた。大事なものをもぎ取られた様な気がしてね。子供だったからやっぱり悲しかったんだな。
その後、おじいちゃん(お父さんの父親)も仕事に行っていたのを切り上げて帰って来たんだけど、帰って来た時は、亡くなった大じいさまの前で正座して一礼して、その後は冷静にお葬式の段取りとかをしていた。
おじいちゃんもおばあちゃんも悲しんで泣いたりとか取り乱したりすることはまったくなかった。それを見たお父さんは、はじめは「おじいちゃんとおばあちゃんは大じいさまの養子で本当の子供じゃないから悲しくないのかな?」と、思っていた。
二人とも養子だったからね、大じいさまの実の子供じゃなかったからそう思ったんだな。なんかちょっと冷たい感じさえその時はしたんだ。
それから十数年後、お父さんが大人になって20歳代になった時だ。知り合いのあるおじいさんが亡くなりそうだったのでお見舞いに行ったの。そうしたら、そのお子さんもお見舞いに来ていて、すでにものも言えなくなったおじいさんの手を握って涙を流して最後になるだろう対面をしていたんだ。
お子さんと言ってもお父さんよりもだいぶん上だよ。そのお子さんは、別に変な人でもないし悪い人でもないけれど、そのおじいさんはそのお子さんのことを以前からいろいろと心配していたんだよね。
それを見てお父さんは、「亡くなりかけてものも言えなくなってから、悲しんで涙を流しても遅いよな。もっとおじいさんの元気な時から心配かけずに安心させてあげたらよかったのに・・・」と、思ったの。もちろんその光景自体は悪いことではないし、よくあるお別れのシーンだとは思うけどお父さんはそう思っちゃったんだな。
そう思うのと同時に、ふと昔の大じいさまが亡くなった時のおじいちゃんとおばあちゃんの対応を思い出したんだ。
あの時、冷たい感じさえしたあの対応は「おじいちゃんもおばあちゃんも一生懸命大じいさまに仕えてきたから、そういう悲しむとか取り乱すとかなかったんだな、自信をもって見送っていたんだな。」ということに気がついたら、うちのおじいちゃんとおばあちゃん(お父さんの両親)は「すごく偉かったな~」と思うようになったんだ。
大じいさまは、晩年は寝たきりでおばあちゃんが一生懸命お家で介護していたからね。もちろん一人では無理なので親戚のおばさんなどにもたくさん手伝ってもらって助けてもらっていたけど。(おばさんたちに感謝!!)
在宅介護だったから、当時は家族旅行もしたことないし、外食もない、両親と一緒に出掛けるなんてほとんど記憶にないくらいの状況だった。おじいちゃんもおばあちゃんもそれだけ一生懸命大じいさまのことを大切にしていたんだね。
だいぶん脱線したけど話を戻して、おじいちゃんとおばあちゃんが冷静に大じいさまを見送ったことを思い出したときに、お父さんも「おじいちゃんやおばあちゃんが亡くなったら冷静に見送ってあげたい、自信をもって見送ってあげたい、そうするにはおじいちゃんやおばあちゃんが元気なうちからお父さんがしっかりと人生を歩んで安心させてあげなくては・・・」と思ったの。
そうして、いよいよこの前9月におじいちゃんが亡くなったわけだ。お父さんを含めて兄弟姉妹4人いるけどみんなで力を合わせてちゃんと冷静に見送ることができたと思う。涙を流して悲しみながら見送るよりも和やかに良い送り方ができたと思ってる。
おじいちゃんも大じいさまと同じで在宅介護だったけど、兄夫婦が本当に良く面倒を見てくれて感謝だ。特に兄嫁には本当にお世話になった。感謝しかないね。
あなたたちもお父さんやお母さんといつかは必ずお別れの時がやってくる。その時に自信をもって堂々と見送ってほしい。
涙なんか流さなくていい、みんなで和やかに送ってちょうだい。そうできるようにしっかりと人生を歩んでね。
今回はちょっと長くなったけど大事なことだから伝えておくよ。